社内のサーバー室に置いたシステムが古くなり、サーバーの保守期限が近づいている。担当会社からは「この機会にクラウドへ」と言われたけれど、今のシステムをそのまま載せられるのか、それとも作り直しになるのかが分からない。そういう状態でこの記事にたどり着いた方に向けて書きます。

先にお伝えすると、載せ替えで済むかどうかは調べれば事前に分かります。判断が難しいのは技術ではなく、費用の見え方が変わることのほうです。買い切りだった設備が毎月の支払いに変わるので、社内での説明の仕方も変わります。この記事では、そのまま載せ替えられるかを見分ける項目と、費用がどう変わるかを整理します。どの方式で作り替えるかや刷新の費用相場は別の記事に譲ります。

この記事のポイント

  1. そのまま載せ替えられるかは、稼働環境の5項目を調べれば事前に判定できる
  2. ハードウェアに依存している部分と、置き場所が決まっている部分は載せ替えでは済まない
  3. クラウド化は安くなる話ではなく、買い切りの資産が毎月の経費に変わる話
  4. 見積もりを取る前に、今の使用量を測っておかないと各社の金額を比べられない
目次
  1. レガシーシステムをクラウドに載せ替えられる条件
  2. クラウドを使っている会社は8割を超えた
  3. そのまま載せ替えられるかを見分ける5項目
  4. 載せ替えでは済まないケース
  5. 保守期限を起点に順番を決める
  6. レガシーシステムのクラウド移行で費用はどう変わるか
  7. 買い切りの資産から毎月の経費に変わる
  8. クラウドにしても安くならない条件
  9. 見積もりを取る前に測っておく数字
  10. 社内でクラウド化を説明するときの言い方
  11. レガシーシステムのクラウド移行についてよくある質問
  12. 総括:レガシーシステムのクラウド移行の判断軸

レガシーシステムをクラウドに載せ替えられる条件

5行のチェックリストのうち上3行に確認済みのチェックが付き、下2行が未確認のまま残っている、クラウドへ載せ替えられるかの判定を表したフラットイラスト
載せ替えで済むかどうかは、稼働環境を調べれば事前に分かる

まず「うちのシステムは載るのか」から片付けます。ここが決まらないと費用の話もできませんし、担当会社の提案が妥当かどうかも判断できません。結論から言うと、載せ替えで済むかどうかは事前に調べられます。

クラウドを使っている会社は8割を超えた

最初に、現在地を数字で確認しておきます。総務省の令和7年版 情報通信白書によると、2024年の時点で80.6%の企業がクラウドサービスを利用しています。この10年で倍増した数字です。

ただし、この数字の読み方には注意が必要です。同じ調査で利用率が高いとされているのは、ファイル保管・データ共有、社内情報共有・ポータル、電子メール、給与や財務会計や人事、スケジュール共有です。つまり8割が使っているクラウドの中身は、周辺の業務やグループウェアが中心だということになります。

ここから2つのことが言えます。ひとつは、自社の基幹の業務システムがまだ社内のサーバーにあっても、特別に遅れているわけではないということ。もうひとつは逆に、「うちはもうクラウドを使っているから移行は済んでいる」とも言えないということです。メールやファイル共有をクラウドにすることと、20年動いてきた業務システムを載せ替えることは、難易度がまったく違います。

なおこの白書はクラウド利用全般の調査であって、古いシステムを移せるかどうかを調べたものではありません。自社が移せるかは、次に挙げる項目を自分で確認する必要があります。

そのまま載せ替えられるかを見分ける5項目

載せ替えで済むかどうかは、次の5つを調べれば見当がつきます。担当会社に聞けば答えられる内容なので、提案を受ける前に確認しておいてください。

調べること そのまま載せやすい 作り替えが要る可能性
OSと土台のソフトのサポート状況 まだサポート期間内 すでにサポートが終了している
ソフトの利用許諾 クラウドでの利用が認められている 特定の機器でしか使えない契約
専用の機器への依存 一般的なサーバーで動いている 専用ボードや専用端末が必要
外部とのつなぎ方 一般的な回線でつながっている 専用線や電話回線を使っている
夜間処理の所要時間 余裕をもって終わっている 朝までギリギリで終わっている

意外に見落とされるのが2つ目です。ソフトの利用許諾が「この機器で使う」という前提になっていると、クラウドに持ち込めないことがあります。持ち込めても追加費用がかかる場合があるので、契約書を確認しておいてください。

5つ目も先に確認する価値があります。今ギリギリで終わっている夜間処理は、環境が変わると時間が延びることがあります。延びて業務開始に間に合わなくなると、処理そのものを作り直す話になります。

載せ替えでは済まないケース

上の5項目のうち、右側に当てはまるものがあると、そのまま載せるだけでは終わりません。代表的なのは次の3つです。

ひとつ目は、専用の機器につながっているシステムです。工場の設備、計量器、専用のカード読み取り機などにつながっている場合、その部分は社内に残すか、つなぎ方ごと作り替えることになります。全部をクラウドに持っていく前提で話が進んでいたら、そこは確認してください。

ふたつ目は、データの置き場所が決められている場合です。取引先との契約や業界のルールで保管場所に条件が付いていることがあります。この場合は置ける場所が限られるので、選択肢が先に絞られます。

みっつ目は、サポートが終わったソフトの上で動いている場合です。載せることはできても、動かなくなったときに直せる相手がいない状態は変わりません。この場合は載せ替えではなく作り替えの検討に入ります。

保守期限を起点に順番を決める

ここまでの確認が終わったら、いつまでに何をするかを決めます。判断の起点になるのは、たいていサーバーや保守契約の期限です。

期限まで1年を切っているなら、まず期限を延ばせるかを確認してください。延長できるなら、そのあいだに調べて決めるほうが安全です。延長できない場合は、期限に間に合う範囲で載せ替えられる部分から動かし、作り替えが必要な部分は次の段階に回します。保守期限や保守切れのときの選択肢は、基幹システムの保守料は妥当?相場の見方と保守切れの対応を解説で整理しています。

そのうえで、どういう作り替え方をするかという方式の話になります。そのまま移すのか、作り替えるのか、パッケージに寄せるのかという選び分けは、基幹システムの移行方式はどう選ぶ?3つの選択肢と費用の見方を解説で整理していますので、載せ替えでは済まないと分かった時点でそちらを確認してください。

レガシーシステムのクラウド移行で費用はどう変わるか

明るいオフィスで50代男性の担当者が経理担当に向けて、毎月の費用に変わることを資料を示しながら説明している引きの場面
安くなるかではなく、費用の性質が変わることを先に説明する

次は費用です。ここで多くの会社がつまずきます。理由は金額の大小ではなく、社内での扱いが変わることに気づかないまま話を進めてしまうからです。

買い切りの資産から毎月の経費に変わる

今までは、サーバーを買って5年使う形でした。まとまった金額を一度払い、あとは保守料を払う。社内では設備の購入として扱われ、何年かに分けて費用にしていたはずです。

クラウドにすると、この形が変わります。買うものが無くなり、毎月の利用料を払い続ける形になります。金額の総額は近くても、社内での見え方はまったく違います。設備投資の稟議ではなく、毎月出ていく費用の話になるからです。

ここを先に社内で共有しておかないと、あとで「思ったより高い」という話になります。5年で割れば同じくらいでも、毎月の請求書として見ると重く感じるためです。逆に、初期にまとまった資金を用意しなくてよくなるという利点もあります。どちらが自社に合うかは、資金の余裕と、そのシステムをあと何年使うかで決まります。

ひとつ注意しておくと、クラウドは使わなくなっても止めるまで払い続けます。テスト用に作った環境を消し忘れて払い続けている、というのはよくある話です。誰がいつ止めるかを決めておいてください。

クラウドにしても安くならない条件

「クラウドにすれば安くなる」と言われることがありますが、条件によっては高くなります。次の3つに当てはまるなら、金額をよく確認してください。

ひとつ目は、24時間フルに動かし続けるシステムです。クラウドが安くなるのは、使う量を必要に応じて増減できる場合です。常に最大の性能を使い続けるなら、割安にはなりにくくなります。

ふたつ目は、社外との間で大量のデータをやりとりする場合です。クラウドでは外に出すデータの量で費用がかかることがあります。毎日大量の帳票や画像を外に送るシステムでは、ここが積み上がります。

みっつ目は、ソフトの利用許諾を持ち込めない場合です。今の契約がクラウドで使えず、買い直しになると、その分がそのまま増えます。

見積もりを取る前に測っておく数字

各社の見積もりを比べたいなら、今の使用量を測って同じ数字を渡してください。これが無いと、相手は安全側に大きめの構成で見積もるので、金額がばらついて比較になりません。

相談の前に測っておく数字

  • 今のサーバーの処理性能と、実際に使っている割合(ピーク時と平常時)
  • 使っている記憶容量と、1年でどれくらい増えているか
  • 外部とやりとりしているデータの量(1日あたり)
  • 夜間処理にかかっている時間と、終わっている時刻
  • 同時に使っている人数と、その時間帯
  • 止まったときに何時間まで許容できるか

いちばん効くのは1つ目です。「性能の何割を使っているか」が分かると、過剰な構成を提案されたときに気づけます。多くの場合、実際の使用率は思ったより低いものです。

これらが社内で測れない場合は、測ること自体を先に依頼する方法があります。現状を調べる工程を単独で発注する考え方は、レガシーシステムの解析はどこまで必要?費用と頼み方で整理しています。

社内でクラウド化を説明するときの言い方

最後に、社内をどう通すかです。ここで技術の説明から入ると、まず伝わりません。

伝える順番は、期限・変わること・選択肢の3つです。まず「サーバーの保守が何年何月で切れる」という期日を示します。次に「買い切りから毎月の支払いに変わる」と費用の性質を伝えます。最後に「そのまま載せる場合と作り替える場合で、金額と期間がこう違う」と選択肢を並べます。この順で話すと、技術が分からない相手でも判断できます。

そのうえで複数の会社に同じ条件で聞きたい場合は、測った数字と確認した5項目をまとめて渡すのが早道です。RFI(情報提供依頼書)テンプレートに聞くべき項目が並んでいるので、埋めながら渡す情報を整理する使い方もできます。

レガシーシステムのクラウド移行についてよくある質問

Q. 古いシステムはそのままクラウドに載せられますか?
A. 条件次第です。OSと土台のソフトがサポート期間内で、利用許諾がクラウドでの利用を認めていて、専用の機器に依存しておらず、一般的な回線でつながっていて、夜間処理に余裕があるなら、載せ替えで済む可能性が高くなります。どれかが当てはまらない場合は作り替えの検討に入ります。
Q. クラウドにすると安くなりますか?
A. 安くなるとは限りません。24時間フルに動かし続ける、社外と大量のデータをやりとりする、ソフトの利用許諾を持ち込めない、のいずれかに当てはまると高くなることがあります。金額よりも、買い切りから毎月の支払いに変わるという性質の違いのほうが社内では重要です。
Q. 工場の設備につながっているシステムも移せますか?
A. その部分は社内に残すか、つなぎ方ごと作り替えることになります。全部をクラウドに持っていく前提の提案を受けたら、設備とのつなぎをどうするかを必ず確認してください。
Q. サーバーの保守期限まで1年を切っています。間に合いますか?
A. まず保守を延長できるかを確認してください。延長できるなら、そのあいだに調べて決めるほうが安全です。延長できない場合は、期限に間に合う範囲で載せ替えられる部分から動かし、作り替えが必要な部分は次の段階に回します。
Q. どのクラウド事業者を選べばよいですか?
A. 事業者を先に決める必要はありません。先に決めるのは、載せ替えで済むのか作り替えるのかと、今の使用量です。そこが決まっていない状態で事業者を選ぶと、構成も金額も比べられません。