生産管理の周りに小さなシステムを作ることになり、上司から「大手に頼めば安心だろう」と言われた。そこで大手のシステム開発会社を検索してみると、「おすすめ15選」「17社を厳選」といった記事がずらりと並びます。社名はどれも聞いたことがあるのに、どこに声をかければいいのかは一向に決まらない。システム開発会社を探し始めた発注担当者の多くが、ここで手が止まります。

先に結論を書くと、大手かどうかは発注先を決める軸としては弱く、自社の予算と規模に合う会社の帯を先に決めるほうが早く絞れます。この記事では、大手に頼んだときに実際に何が起きるのか、ランキングの順位が何を表しているのかを整理したうえで、一覧から3社に絞る手順までを発注側の目線で解説します。

この記事のポイント

  1. 大手に頼んでも実際に作るのはグループ会社や協力会社であることが多い
  2. 大手が元請けで直接受けやすいのは数千万円以上の案件が中心
  3. ランキングの順位は売上や掲載の順で発注先としての相性の順ではない
  4. 先に自社の予算と規模から会社の帯を決めると一覧から3社に絞れる
目次
  1. 大手のシステム開発会社に頼むと何が起きるか
  2. 大手に頼んでも作るのは誰か
  3. 大手が受けにくい予算と規模
  4. 大手の見積もりが高くなる理由
  5. 大手に頼む意味があるケース
  6. 大手なら失敗しないとは限らない
  7. システム開発会社の大手ランキングの使い方
  8. ランキングの順位は何の順か
  9. 一覧から3社に絞る手順
  10. よくある質問
  11. 総括:システム開発会社は大手かより規模で選ぶ

大手のシステム開発会社に頼むと何が起きるか

大手の窓口担当者の後ろに、実際に作業するグループ会社や協力会社の担当者が並んでいる体制のイメージ
大手に頼むと、窓口と実際の作り手が別の会社になることがよくあります

「大手に頼めば安心」という言葉には、倒産しない、技術者が大勢いる、実績が多い、といった期待がまとめて込められています。どれも間違いではありません。ただ、発注側が本当に知りたいのは、自分の案件をその会社がどんな体制で、どのくらいの熱量で進めてくれるのかという点のはずです。

ここでは、大手のシステム開発会社に頼んだときに発注側から見えにくいことを5つに分けて整理します。

大手に頼んでも作るのは誰か

大手のシステム開発会社に発注すると、契約の相手と打ち合わせの窓口は大手の社員になります。ところが、設計や実装を担う技術者は、グループ会社や協力会社の人であることが珍しくありません。大手の多くは、案件の管理と品質の責任を持ち、実際の作業は外部の会社と分担する形で仕事を回しているからです。

この構造そのものは悪いことではありません。大手が品質と納期に責任を持ち、問題が起きれば元請けとして対応してくれるのは、発注側にとって大きな安心材料です。気をつけたいのは、提案の場で会った優秀な技術者が、実際のプロジェクトには関わらないことがある点です。

そのため、大手に見積もりを頼むときは「このプロジェクトに入る人のうち、御社の社員は何人ですか」「設計と実装を担当する会社はどこですか」と聞いておくと、体制の実態が見えてきます。再委託の仕組みやリスクについては、受託開発とSIerの違いと依頼先の種類で詳しく整理しています。

大手が受けにくい予算と規模

大手のシステム開発会社は、大勢の技術者を抱え、管理の仕組みも手厚く作られています。その分、1件あたりの管理コストが高く、小さな案件ほど採算が合いにくくなります。

私の感覚では、大手が元請けとして直接受けやすいのは、数千万円以上の案件が中心です。1,000万円前後の案件で問い合わせると、グループ会社や地域の子会社を紹介されたり、提案までに時間がかかったりすることがよくあります。もちろん会社や時期によって差があるので、あくまで一般的な目安として捉えてください。

予算が数百万円から1,000万円台の案件なら、最初から中堅や小規模の開発会社も候補に入れておくほうが、話が早く進みます。手元の予算で何人が何か月動けるのかを先に置き換えておくと、どの規模の会社が合うのかも見えやすくなります。この考え方はシステム開発の予算でできることの目安で解説しています。

大手の見積もりが高くなる理由

同じような機能のシステムでも、大手の見積もりは中堅や小規模の会社より高くなりがちです。技術者の単価が高いこともありますが、それ以上に効いているのが、管理の厚さです。

大手の見積もりには、プロジェクトマネージャーや品質管理の担当者の工数、工程ごとのレビュー、細かく整えられた設計書や報告書の作成といった費用が含まれています。さらに、実際の作業をグループ会社や協力会社と分担している場合は、元請けとしての管理と、作業する会社の中での管理が二重にかかります。

これ自体は無駄ではなく、大規模な案件を安定して進めるための仕組みです。ただ、小さな案件にもこの仕組みがそのまま乗ると、作る部分より管理する部分の費用が目立つ見積もりになります。複数社の見積もりを比べるときは、管理や品質保証の費用がどの行にどれだけ入っているかを見て、その厚さが自社の案件に本当に必要かを考えると、金額の差の理由が見えてきます。

大手に頼む意味があるケース

一方で、大手に頼むことに明確な意味があるケースもあります。止まると事業が止まる全社規模のシステムは分かりやすい例ですが、発注側で見落とされやすいのは、技術とは別の理由で大手が求められる場面です。

  • 監査や取引先の要請で、発注先の財務基盤や情報セキュリティの認証の取得状況を問われる
  • 24時間の運用監視や、全国の拠点への展開まで1社にまとめて任せたい
  • 10年単位で保守を続ける前提で、会社そのものが続くことを社内に説明する必要がある

これらに共通するのは、技術力よりも、長く責任を持ち続けられる体力と、社内外に対して説明がつくことが求められる点です。逆に言えば、業務の一部を効率化する小さなシステムや、まず試してみたい新しいサービスの試作では、大手の強みが生きる場面はあまり多くありません。

その中間にあるのが、大手のグループ会社や地域の子会社に頼むという選択肢です。親会社の開発標準や品質管理の仕組みを使いながら、大手本体より小さな案件にも対応してくれることが多く、「大手の安心感はほしいが予算が届かない」という案件にちょうど合います。

大手なら失敗しないとは限らない

大手に頼めば失敗しない、というのも思い込みの一つです。報道される大規模なシステム開発の失敗や、発注者と開発会社が裁判で争うような事例には、大手が元請けだった案件も少なくありません。

失敗の原因として多いのは、会社の規模ではなく、要件が固まらないまま開発が進むことや、発注側の判断が遅れることです。大手であっても、発注側が何を作りたいのかを決めきれなければ、プロジェクトは迷走します。

大手に頼むと、提案書や進捗報告の資料が立派に整っていることが多く、それだけで安心してしまいがちです。資料の見た目ではなく、要件の決まり具合や、課題がいつまでに誰の判断で解消されるのかを見続けることが、会社の規模にかかわらず発注側に求められます。

システム開発会社の大手ランキングの使い方

工場の事務所で3人の担当者が立ったまま資料を手に、声をかける開発会社の候補を話し合っている様子
ランキングは順位で選ぶのではなく、候補を探す名簿として使います

大手のシステム開発会社を検索すると出てくるランキングや「おすすめ◯選」は、使い方さえ間違えなければ、候補を探すための名簿として役に立ちます。ここでは、順位が何を表しているのかを確認したうえで、一覧から3社に絞るまでの手順を整理します。

ランキングの順位は何の順か

最初に確認したいのは、そのランキングが何の順に並んでいるかです。検索結果に出てくるランキングは、大きく3つに分かれます。

ランキングの種類 並び順の基準 主な読者 発注での使い方
業界の企業ランキング 売上高や従業員数 投資家や業界研究をする人 会社の規模を知る材料にとどめる
SIerランキング 年収や働きやすさ 転職や就職を考えている人 発注先の判断にはほぼ使えない
おすすめ◯選・◯社厳選 運営者が選んだ順 発注先を探している人 名簿として使い、順位は気にしない

売上高のランキングは、会社の規模を知るには役立ちますが、あなたの案件をうまく進めてくれる順ではありません。年収や働きやすさのランキングは、働く人のための情報なので、発注の判断にはほとんど関係がありません。

注意したいのは、発注者向けに見える「おすすめ◯選」です。このタイプの記事は、開発会社を紹介するマッチングサービスや、開発会社自身が書いていることが多く、紹介や掲載で収益を得る仕組みの上に成り立っています。実際に、記事を書いた開発会社が自社を一覧の先頭に載せている例も見かけます。

これ自体は珍しいことではなく、情報として役に立つ部分もあります。ただ、順位が「あなたの案件に合う順」ではないことは押さえておきましょう。記事の運営会社を確かめ、その会社がどちらの立場で書いているのかを見てから読むと、情報の受け取り方を間違えずに済みます。

運営会社は、ページの最下部にある会社情報の欄や、記事の末尾にある問い合わせ先を見るとたいてい分かります。運営会社が開発会社なら、その会社自身が一覧に載っていないかも確かめておきましょう。

一覧から3社に絞る手順

ここからは、ランキングや一覧を名簿として使い、候補を絞っていきます。私がおすすめしている順番は次のとおりです。

まず、予算と規模から、大手・中堅・小規模のどの帯を中心に探すかを決めます。会社の規模ごとの向き不向きは受託開発会社の選び方と比較ポイントで表にまとめているので、ここでは結論だけ使います。予算が1,500万円なら中堅を中心にして、小規模を1社、大手のグループ会社を1社混ぜる、といった決め方で十分です。

次に、一覧に載っている会社の中から、自社と同じ業種や、同じくらいの規模のシステムを作った実績がある会社を選びます。実績は社名の数ではなく、どんな業務の、どのくらいの規模のシステムを作ったのかを見てください。この段階で5〜6社に減らします。

最後に、候補の会社に問い合わせて、体制と進め方を聞きます。先ほど挙げた「プロジェクトに入る人のうち社員は何人か」「設計と実装はどこの会社が担当するか」に加えて、「要件定義をどこまで一緒に進めてくれるか」「保守は何年先まで対応できるか」を聞くと、会社ごとの違いがはっきりします。この回答をもとに、見積もりを依頼する3社に絞ります。

3社から提案と見積もりが届いたら、同じ項目で横に並べて比べます。会社ごとに資料の書き方がばらばらなので、比べる項目を先に決めておくと判断がぶれません。ベンダー選定比較表テンプレート(10カテゴリ100項目)を使うと、体制や保守、費用の項目を漏れなく並べられます。

よくある質問

Q. 大手のグループ会社に頼むのは、大手に頼むのと同じですか?
A. 同じではありません。グループ会社は親会社の名前や仕組みを使えることが多い一方で、契約の相手はあくまでグループ会社です。責任を負うのがどの会社なのか、親会社がどこまで関わるのかを、契約前に確認しておきましょう。予算が大手の帯に届かない案件では、グループ会社がちょうどよい選択肢になることもあります。
Q. 大手に問い合わせて断られたら、どうすればいいですか?
A. 断られたこと自体は珍しくなく、案件の規模が大手の受けやすい帯と合っていないというサインです。中堅や小規模の会社に切り替えるか、紹介されたグループ会社の話を聞いてみましょう。大手にこだわる理由が「安心感」だけなら、保守の体制や財務状況を確認することで、中堅の会社でも同じ安心を得られることが多いです。
Q. 開発会社を紹介するマッチングサービスは使ってもいいですか?
A. 使ってかまいません。自分で一から探す手間が省け、候補を短期間で集められるのが利点です。ただし、紹介される会社はそのサービスに登録している会社に限られます。紹介された会社だけで決めず、自分で探した会社も1〜2社混ぜて比べると、判断の偏りを防げます。